永瀬、無慈悲な金打ち
劣勢かつ1分将棋という二重苦のなか、中村は歯を食い縛って指し続ける。目は死んでいない。7、8、9……まで秒を読まれて、慌て気味に[先]9一竜。時間切れになりそうで心臓に悪い。
永瀬も負けず劣らずタフだ。闘志とは無縁の手付きで、しかし先手玉を締め上げていく。仮に千日手になっても、喜んで指し直し局に臨む体力が残っていそうだった。
7筋を連打で押さえた後、永瀬は[後]8三金とはじいた。心をへし折る、無慈悲な金打ち。[先]9五馬に、さらに[後]9四歩と追い詰める。徹底して馬をいじめ抜くことが、自玉の安全につながり、ひいては勝利に結びつく。「将鬼」と化した永瀬に、いささかのためらいもない。
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