渡邊十絲子・評 『塚本邦雄の百首 塚本の血のあと』=林和清・著

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塚本邦雄の百首
塚本邦雄の百首

 (ふらんす堂・1870円)

可能性、狭いところに押し込めてくれるな

 塚本邦雄の短歌をふと思い出し、読み返したくなる時がある。詩を読んだり書いたりしているわたしにとって短歌は「おとなりさん」だが、専門家ではないので繰り返し何度でも入門者として接することのできる気楽さがある。今回はふらんす堂「歌人入門」塚本邦雄の巻を手にとった。石川啄木、斎藤茂吉など、ひとりの歌人の作から百首を選び解説を加えたシリーズである。

 著者は塚本に師事した歌人。最近の若い世代による塚本邦雄論の「フラットさ」に驚かされるという。<それも仕方がない。「革命歌作詞家」や「馬を洗はば」も晩年の歌も、一列に並べて文庫や全集で読めるのだから、塚本邦雄の実人生とは離れて、歌からさまざまな要素を抽出して論じればよいのだ。フラットになるのも当然であろう。そしてそれは塚本自身が望んだ読まれ方であるとも言える>としながらも、<塚本邦雄というひとりの…

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