本人はもっと厳しい……? 三井住友フィナンシャルグループ(FG)は5日、AI(人工知能)で作成した中島達社長の分身、「AI―CEO(最高経営責任者)」を開発したと発表した。AI活用が急速に広がる中、業務への本格導入の第一歩として社員にAIへ親しみを持ってもらう狙いがある。
中島氏が社長に就任した2023年12月以降の経営会議や公式発言などをテキスト化してAIに内容を学習させた。チャット形式で「分身」に質問するとAIが回答し、社長とのやりとりを疑似体験できる。
7月中旬からグループ中核の三井住友銀行の行員約3万人が利用できるようになった。業務内容や自身のキャリア、思考の整理をするための相談などに利用されているという。
利用した社員からは「社長の視点をまねて経営に関する戦略的アドバイスをしてくれる」と好意的な声が上がった。一方、中島氏に近い社員からは「本人だったらもっと厳しい意見も言うだろう」と、実物との「隔たり」を指摘する声も寄せられたという。
また、「社長の考えに寄せてしまい前例を打ち破るアイデアから遠のくのでは」と使い方に懸念する声もあるといい、そうした課題に留意しながら改良を進めていくという。
同社は営業現場での活用や事務の効率化など、今後より幅広い業務でAIを活用する考え。長谷部智也執行役員は「人間とAIが共に働き思考を深めていく労働環境となる中、まずはAIが役に立つという価値観を持ってもらいたい」と話した。【山口智】
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