寄稿 語り継ぐ平和への祈り/中 心ある書き手を得て=野村幸輝(旭川市立大准教授・米文学)

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 ノンフィクション『ナガサキ 核戦争後の人生』(邦訳2019年、みすず書房)を書いたアメリカの作家スーザン・サザードさんに、被爆者へ取材したときの様子、核兵器の脅威、そして、被爆者への思いについて聞いた。

 戦後しばらくすると、自らの体験を人前で話す被爆者が現れた。吉田勝二さん(10年死去)もその一人である。彼は13歳の時、顔全体に大やけどを負った。サザードさんは語る。「吉田さんが人前で語ろうと決めた場面は、私の本のなかで最も重要な場面の一つです。自分に起こってしまったことや、変わってしまった自分の容姿については、もうどうすることもできない、と彼は心のなかで結論づけました。恥ずかしさを克服し、平和のために語り始めたのです。とても勇敢な人でした」

 インタビュアーとして、被爆者のリアルな描写や悲痛な気持ちを受けとめるには、覚悟が必要だったのではないだろうか。

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