高校野球・夏の甲子園1回戦(8日)
○花巻東(岩手)4―1智弁和歌山●
投手は投げるだけじゃない。花巻東の背番号「17」の左腕・万谷堅心が見せた五回のフィールディングに、チームが目指す選手像が凝縮されていた。
2―1で迎えた五回無死一、二塁。万谷は二塁けん制を繰り返し、一塁にもボールを送った。狙いは二つ。間を十分に取って自分を落ち着かせることと、走者を塁にくぎ付けにして、送りバントを試みる智弁和歌山に重圧をかけることだ。
3球目。バントをさせると、打球が目の前に転がってきた。万谷はマウンドを駆け下りて素早く球を拾うと、迷わず三塁へ送球。間一髪、アウトだ。続く4、5番も抑え、得点を許さなかった。花巻東の佐々木洋監督が「勝敗を分けた」とたたえた守りだった。
チームでは同じ無死一、二塁で始まるタイブレークを想定し、日ごろから投手と内野手の連係を繰り返し練習してきた。万谷はピンチを迎えて「自分で作った場面。絶対に三塁でアウトを取りたかった」。焦りはあったが、練習で染みついた動きは裏切らなかった。
六回以降は投球でも本領を発揮した。緩い変化球と130キロ台前半の直球のコンビネーションで凡打の山を築き、センバツ準優勝の相手打線を無安打に。156球を投げきり、1失点完投した。
花巻東の「17」は、卒業生の大谷翔平(米ドジャース)らが下級生の頃に背負ったことで知られる。投球スタイルは異なるが、万谷も打撃に定評がある。
投げて守って打って。野球の可能性を追求するのが花巻東だ。万谷もまだ2年生。本人は「まだそれほどの選手じゃないです」と謙遜するが、高校生の可能性は無限大だ。【石川裕士】
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