7月に就任した金融庁の伊藤豊長官が毎日新聞のインタビューに応じ、地方経済を支える地域金融機関の経営基盤を強化する取り組みを推進していく考えを示した。金融庁が年内に取りまとめる「地域金融力強化プラン」を念頭に「どのような支援ができるかしっかり考えたい」と述べた。
同プランは、人口減少や高齢化の中で地域が持続的に発展していくための関連施策のパッケージ。地方の有望なプロジェクトへの資金供給だけでなく、事業者の合併・買収(M&A)の支援なども想定する。2026年3月末に申請期限が切れる公的資金注入制度の延長なども検討している。
伊藤氏は「地域金融機関は地方経済の活性化や創生に非常に大きな役割を担っている。金融機関や利用者にも分かりやすく説明できるようなパッケージを作りたい」と意気込んだ。
地方銀行や信用金庫、信用組合は「金利ある世界」で経営体力に問題を抱えているケースも多く、再編を含む将来のあり方が喫緊の課題だ。伊藤氏は「再編しても優れた金融サービスを提供できなければ地域の活性化には貢献できない」と指摘。「良いサービスを低コストで提供するための戦略などが根底にあって、初めて意味がある」と強調した。
政府が掲げる「資産運用立国」の推進も重点テーマに挙げた。家計による投資が金融機関などを経て再び家計へ還流する「インベストメントチェーン(投資の連鎖)」をうまく機能させる必要があると説く。
そのうえで、国民の金融リテラシー向上を目的に設立された官民組織「金融経済教育推進機構(J―FLEC)」や、上場企業の統治指針「コーポレートガバナンス・コード」を通じ、家計の充実や企業の稼ぐ力の強化などを推進する意向を示した。【福富智】
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