
かぶる「かさ」が、新たな暑さ対策グッズとして注目を集めている。7月に入り、交流サイト(SNS)ではかさをかぶって通学する小学生の写真が1万回以上拡散され、アウトドア用品大手のモンベルでは、かさ型の帽子の一部モデルが早くも完売状態だ。
そんな中、意外な日よけグッズも“再評価”の兆しをみせている。
2019年、小池百合子・東京都知事が東京オリンピック・パラリンピックでの暑さ対策として発表した「かぶる傘」だ。あの傘、今はどうなっているのだろうか。
かさをめぐる話題を追った。
「かわいい」「両手空く」
かさをかぶり、ランドセルを背負った小学生の後ろ姿の写真を1日にX(ツイッター)に投稿したのは、ユーザー名「エビふらい」さんだ。投稿は1万回以上拡散された。

Xでは、「かわいい」「両手が空くので安心」「これは流行してほしい。みんなかぶろう笠(かさ)」と肯定的な反応が寄せられた。
エビふらいさんは長野県に住む30代女性だ。
暑い日が続いた6月、小学3年生の次男(8)が、下校時に友人の日傘に入れてもらったことで「日傘がほしい」と相談してきたという。
「ただ、折り畳みだと扱いが難しくて少し心配だったので、かぶるタイプの『かさ』もあるよ、と写真を見せたら、『それが欲しい』と言ったんです」
次男の感想は…
そして6月末、次男の言葉を「信じていいものか」と購入を悩む内容をXに投稿した。
これを引用し、かさをかぶって登校する後ろ姿の画像に「有言実行」と書き添えた投稿がバズった――という経緯だ。
次男はかさをかぶって下校した。「(頭部の)風通しが良くて涼しかった」と気に入った様子だという。
「学校では同級生から『かぶってきちゃダメだよ』とも言われたそうですが、先生がその子と一緒に考えて、『ダメじゃない』となるまで対話してくれたそうです」
投稿への反響について、「子どもの日傘利用がSNS上で議論されていたこともあって、注目されたのかもしれません」と振り返る。
発売から8年 かさ型の帽子人気上昇

エビふらいさんの投稿とともに話題になったのが、モンベルが販売している「アンブレロ」というアウトドア用や野外作業用の帽子のシリーズだ。
モンベルによると、発売は17年。天然草の素材でできた「フィールドアンブレロ」(7700円)と、90%UVカットの素材で折り畳みもできる「クラッシャブルアンブレロ」(6300円)の2モデルを展開した。
20年には防水素材を使った折り畳み式の「レインアンブレロ」(6300円)も新たに発売した。
頭頂部を広く覆う上、頭と帽子との間に空間があるため、蒸れにくく涼しいという点がこのシリーズの特長だ。
今年はフィールドアンブレロが7月上旬に完売し、再入荷は秋以降になる予定だ。
担当者は「想定以上の反響です。日よけをしながら両手も使える点が人気の理由でしょうか」と喜ぶ。
「ダサい」が一転、再評価?
かさへの注目が集まる中、“再評価”されているのが、21年の東京五輪・パラリンピック開催前に、東京都が大会ボランティア用につくった「かぶる傘」だ。
「男性で日傘を差すのは恥ずかしいという、何か気が引けるという方は、もう思い切ってここまでいったらいかがでしょうか。お勧めしたいと思います」

小池知事が19年5月の記者会見で、試作品をかぶった職員を伴って発表するやいなや、SNSでは「見た目がダサい」と散々な評価で話題をさらった。
しかしここ数年、再評価する声が上がりつつある。SNSでは、こんな投稿がたびたび拡散してきた。
<この日傘、バカにできない時代になってきてるよなぁ>
<実は凄(すご)い有能なのでは?>
実際、都によれば大会ボランティアからは「日差しを遮る効果は高い」との感想が多くあったという。
99.99%のUVカットと遮熱機能がある素材を使用しており、直径約60センチ、重さは180グラムだ。当時、製作費1本1000円で4000本が用意された。
新型コロナウイルスの影響で五輪が無観客開催となり、ボランティアの活動エリアは限定的だったが、希望者に貸与し「数千本」が使われたという。
「かぶる傘」が進化?!
このかぶる傘、実は「今でも使われている」そうだ。

都によると、スポーツ大会や五輪関連のメモリアルイベントのボランティア、職員らに無償で提供している。販売はしておらず、在庫は約1000本まで減った。
小池知事は最近の記者会見でも、かぶる傘に言及している。
「だいぶ前にかぶる傘を紹介したら、いろいろ評判を呼びました。このかぶる傘、進化しておりまして。ただいま登場しますので、お待ちください」
今月18日、小池知事の定例記者会見に現れたのは、日傘つきのリュックサックを背負った職員だ。
市販の商品だが、都民に熱中症対策を呼びかける一環で紹介したという。
小池知事は満面の笑みで報道陣にアピールした。
「これが新しい日傘。私は『日傘男子』と呼ばせていただこうと思います。ね、どうでしょうか?」
熱中症対策としての効果は

専門家も、かさの熱中症予防効果を評価する。
救急医学が専門で、臨床教育開発推進機構理事も務める三宅康史医師が解説してくれた。
「熱中症の重症例では脳の後遺症が大きな問題となります。頭を暑さから守るのはとても大切です」
そもそも脳は熱に弱いそうだ。
「心臓から送られる血液の2割が頭部へ流れています。脳が働くために酸素やブドウ糖が大量に必要なのと、脳の働きで発生する熱を取り除く必要もあるためです」
頭を守るには、直射日光を防ぐのがポイントだ。日よけで効果的なのは?
「ベストは体幹を含めて日よけができる日傘です。次に帽子をかぶること。中でもキャップよりは麦わら帽が望ましいです。かさは、麦わら帽子と日傘の間という位置づけではないでしょうか」
かさは新たな暑さ対策の定番となるか。今後に注目だ。【待鳥航志】
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