全国高校野球選手権大会は大会第5日の9日、1回戦があり、聖隷クリストファー(静岡)が5―1で明秀日立(茨城)に勝利し、春夏通じて甲子園初勝利を挙げた。
最後のフライアウトをつかんだ中堅手の河原悠人選手(3年)は、ウイニングボールを「どうしたらいいか分からず」ずっと握りしめていたという。
ベンチ外れた主将と級友
九回裏2死一、三塁。相手の打者がセンター方向に飛球を打ち上げた。
「曇り空でボールがよく見えなかったんですけど、何とか直前に見えて、取れました」
記念すべき甲子園初勝利。打球をつかんだ河原選手はほっとした表情を浮かべながら、整列に向かうため、ホームベース付近に走っていった。
勝利したチームは試合終了の整列の際、審判にウイニングボールを渡すのが一般的だ。
ただ、河原選手はこの時「ボールをどうしたらいいか分からなかった」。
グラブの中に入れたまま、相手チームとのあいさつを終えた。校歌(賛美歌)も、ボールをグラブで握りしめながら歌った。
「ずっと持ったままになってしまって……。ベンチに戻ったタイミングで(責任教師の)加茂(勇作)先生に渡しました」
ボールを受け取った加茂教諭は「ようやくつかんだ甲子園初勝利で、(監督の)上村(敏正)先生がこの学校に来てからも初めての勝利だったので」と、すぐに上村監督に手渡したという。
河原選手は、大会直前まで主将を務めていた逢沢開生選手(3年)と2年生の時からクラスメートだ。その逢沢選手は左腕の手術のため、3日の組み合わせ抽選会直後にベンチ入りメンバーから外れた。
「普段からコミュニケーションを多く取っている。前日にも『絶対勝つ』と伝えていました。勝利を届けられてうれしいです」
河原選手は満面の笑みで語った。【深野麟之介】
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