
ミュージシャンの小袋成彬(おぶくろ・なりあき)さん(34)が5月、さいたま市長選に無所属で立候補した。
結果は4位だったが、有効投票数の8・5%に当たる3万2836票を獲得し、一定の広がりを見せた。
小袋さんは宇多田ヒカルさんのプロデュースでメジャーデビューし、現在はロンドンを拠点に活動している。
再び渡英する前に、選挙戦の手応えや将来の構想などを聞いた。
この記事は2回に分けて掲載します。
後編の主な内容
・音楽だと反抗的になる
・既存の選挙「クリエーティブじゃない」
・候補者名の連呼「勝つことが目的化」
・さいたま市に自分のアイデア提案も
・「文化・芸術の受け皿作れたら面白い」
前編 「さいたまをカッコよく」 音楽家・小袋成彬さんが市長選に出たワケ
音楽だと反抗的になる
――出馬は以前から考えていたんですか。
◆近しい人ほど(出馬は)驚かれませんでした。市立病院の赤字とか入札工事の不調とか、4年くらい前から地元の状況は追っていました。地元の選挙に出るからには地に足の着いた話を徹底的にしてみたかった。
でも、結局は社会に物申したかったんです。音楽で表現すると、どうしても反抗的になる。自分の考えを、落ち着いて言葉で聞いてほしかった。
ロンドンでもインフレ(物価上昇)が半端じゃなくて、稼げない人がどんどん社会からこぼれ落ちている。世界中で戦争も起きて、一体誰が望んでるの? 何かシステムがおかしくないかって。ジョン・レノンやボブ・ディランがあれだけ反戦歌を歌っても(戦争は起こり続けている)……。
――「出馬はコロナがきっかけ。文化・芸術にかかわる活動が真っ先に不要不急とされた」とも言われていました。
◆「ミュージシャンってこんなに必要とされないんだ」って思いました。日英に半々で滞在していましたが、日本の「とにかく自粛」「できるだけ自粛」という空気は違和感しかなかった。
文化・芸術に限らずですが、政治や民主主義のシステムに組み込まれていないものは、ないがしろにされ続けると実感しました。
既存の選挙「クリエーティブじゃない」
――実際の選挙はどうでしたか。
◆アイデアがあっても、クリエーティブなことができない。公職選挙法のルールで、ステージを組んで演説するのはNG、スピーカーも二つ置いちゃだめ。いい音でやりたくても左右に置けない。ルールがカルチャーに先行していました。
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