
政府はこれまで行ってきた事実上の減反や生産調整をやめ、コメの増産にかじを切る方針を示した。2024年夏以降のコメ不足や価格高騰を受けたものだが、コメ生産の担い手を確保し、価格の安定化につなげられるかなど課題は多い。関係閣僚会議では農林水産省が前例にとらわれ、コメの需給見通しを見誤ったことも明らかになった。コメ増産は石破茂首相の思い入れが強い政策だが、農政の大転換を着実に進められるかが問われることになる。
長年にわたり事実上の「減反」に翻弄(ほんろう)されてきたコメ農家からは、増産表明を不安視する声が相次いだ。
「足りないから増産すればいいという単純な話ではない」。新潟県柏崎市のコメ農家、内山常蔵さん(82)はこう指摘する。
中山間地に2ヘクタールの田んぼを有するが、高齢のため耕作面積は1・8ヘクタールにとどまる。政府は増産に向けて耕作放棄地の活用などを打ち出すものの、大規模な法人ならともかく、個人経営には現実的ではないという。
「増産で…
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