ウクライナと欧州の高官は9日、英国でバンス米副大統領らと会合を開き、ウクライナ侵攻を続けるロシアとの停戦交渉を巡って協議した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ウクライナと欧州側は、ウクライナ東部州の割譲などが条件とされる露側の停戦案を拒否し、対案として、停戦した上で双方の軍が一部地域から撤退することなどを米国に提案した。
WSJが欧州当局者の話として報じた対案は、まずは停戦を優先▽ウクライナ軍が一部地域から撤退する場合には露軍も他の地域から撤退する▽ウクライナが領土面で譲歩するには北大西洋条約機構(NATO)加盟の可能性を含む「鉄壁の安全の保証」が必要――といった内容だという。
9日の会合は、訪英中のバンス氏とラミー英外相が共催した。英BBC放送によると、ウクライナのウメロフ国家安全保障国防会議書記、イエルマーク大統領府長官と、フランスやドイツ、欧州連合(EU)の安全保障当局者らが参加した。
また、英仏独やEUなど欧州の首脳は9日、共同声明を発表した。ウクライナの主権、独立、領土を守ることの必要性を強調し、「平和への道筋は、ウクライナ抜きで決められてはならない」と訴えた。
15日開催予定のトランプ米大統領とプーチン露大統領の会談を前に、ウクライナと欧州各国は頭越しに交渉が進むことを警戒している。
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日のビデオ演説で、高官会合について「我々のメッセージは全て伝達された」と評価した。10日にはX(ツイッター)に「戦争の終結は公正でなければならない」と投稿し、欧州各国への謝意も示した。
一方、ウクライナメディア「キーウ・インディペンデント」は9日、米国のウィットコフ中東担当特使が6日に、モスクワでプーチン氏と会談した際に提示したとされる停戦案を報じた。
この停戦案では、ウクライナ側が東部ルハンスク、ドネツク両州から軍を撤退させ、引き換えに露軍は一部を占領する東部ハルキウ、北東部スムイの両州から退く▽ロシアが広域を占領する南部ザポリージャ、ヘルソン両州では現在の戦線を領土の境界とする――ことが柱だという。ウクライナ大統領府筋からの情報としている。【ロンドン福永方人、ベルリン五十嵐朋子】
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