全国高校野球選手権大会に出場している広陵(広島)は10日、大会出場を辞退すると明らかにした。広陵を巡っては、1月に部員による暴力事案があったことが判明し、交流サイト(SNS)で中傷が広がっていた。学校や大会主催者はどのように対応すべきだったのか。識者に聞いた。
日本体育大学の南部さおり教授(スポーツ危機管理学)は、SNS上で真偽不明な情報が拡散するなどしてから出場辞退を申し出たことに対し、「遅きに失した対応で、被害生徒、加害生徒を含む多くの関係者を傷つける結果になった」と指摘した。
学校によると、今年1月に部員への暴力事案があり、学校は広島県高野連に報告書を提出した。被害生徒の保護者からは「事実関係に誤りがある」との指摘があり、改めて部員に事実確認をしたが、新たな事実はなかったという。
南部教授は「被害者側に寄り添う対応ができていなかった可能性がある。大会に出場するにしても、被害者側に丁寧に説明し、納得を得るプロセスが必要だったのではないか」と述べた。
校内や部活内での問題がSNS上で拡散されて2次被害につながる恐れがあるとして、「学校は徹底した調査を進めるとともに、SNSを想定した慎重な対応が求められる」と話した。
スポーツ文化評論家の玉木正之さんは「これまで暴力事案のたびに処分が繰り返されてきたが、類似事案が後を絶たない」と問題視。「指導者や大会主催者は、暴力行為がなぜ許されないか、生徒への指導を改めて徹底する必要がある。大会主催者も暴力根絶のため、スポーツは暴力否定の文化であるという指針を出すべきだ」と、根本的な対策の必要性を説いた。【岩崎歩、高良駿輔】
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