8日からの大雨は、九州を中心に線状降水帯が何度も発生し、記録的な降水量となった。梅雨末期に発生するような大雨がなぜ8月に降ったのか。専門家に理由を聞いた。
今回の大雨では、8日に鹿児島県で線状降水帯が2回発生し、気象庁が鹿児島県霧島市に大雨特別警報を発出。9日深夜から11日朝にかけては、九州北部で線状降水帯が10回断続的に発生し、気象庁は11日、熊本県の7市町に大雨特別警報を出した。
24時間雨量は、鹿児島県霧島市で515・5ミリ▽福岡県宗像市で414・5ミリ▽熊本県玉名市で453・5ミリ――を観測するなど、平年の8月の1カ月の降水量の2倍を大きく超えるところもあった。
筑波大の釜江陽一助教(気象学)によると、梅雨明け発表以降、太平洋高気圧が広く日本列島を覆う気圧配置が続いていたが、偏西風の蛇行の影響で8月になって高気圧が南下。先週ごろからさらに東に押しやられて勢力が弱まり、北側の冷たい空気と南側の温かい空気が、列島の上でぶつかる梅雨の典型的な気圧配置となった。
釜江助教は「時季外れという意味では例年に比べて珍しいが、気圧配置としては梅雨期の雨の降り方だった」と分析する。
前線に向かって、南から太平洋高気圧のへりを流れる水蒸気と中国大陸から流れる水蒸気が合流して「大気の川」を形成。この大気の川が九州地方に長期間流れ込んだ。大気の川が発生すると、広範囲で線状降水帯が多く発生する雨をもたらし、2018年7月の西日本豪雨、20年7月の九州豪雨、21年8月の大雨でも同様の現象が起きた。
釜江助教は「ここ数日の大雨をもたらした水蒸気の流れは近年に比べてもかなり強かった」と振り返る。
偏西風の蛇行は「海でいう波のようなもの」といい、ユーラシア大陸の内陸部から徐々に波打ち、それが今回、朝鮮半島、日本列島付近に到達したものだ。偏西風による影響は一時的とみられ、今後は太平洋高気圧の勢力が強まり列島を覆って猛暑になる見通し。ただ、8月下旬以降に、こうした条件がそろうことで再び大雨が起きることは考えられるという。【吉住遊】
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