熊本県など九州地方を襲った記録的な大雨は、夏の観光・帰省シーズンと重なった。書き入れ時のはずだったタクシー業界では、営業車が次々に浸水被害に遭い、所有車の半数近くが水没した事業者も出ている。
熊本市や熊本県益城町、菊陽町などのタクシー事業者でつくる一般社団法人「熊本市タクシー協会」(熊本市東区)が加盟55事業者の被害調査をしたところ、12日午後3時までに回答した49事業者のうち、21事業者で車両が水没するなどの被害が出た。被害車両は計約60台に上り、今後も増える可能性がある。協会の担当者は「後片付けに追われ被害回答できていない事業者もある。引き続き被害状況を把握したい」としている。
熊本市西区の「TaKuRoo(タクルー)」熊本営業所では、タクシー2台が、客を送り届け営業所へ戻る道で水没し、走行できなくなった。1台は10日未明、熊本市中央区壺川の市立壺川小近くを、もう1台は11日午前10時前に同市南区の熊本浜線バイパス近くで走行していた。
ともに腰ほどの高さまで水没したが運転手にケガはなかった。営業所へレッカー移動し走行が可能かどうか点検をする。営業所の担当者は「この時期は帰省客や観光客に加え、暑さからタクシーを使用していただく方も多い。災害の影響で人出が減らないか心配な部分もある」と話した。
熊本市西区松尾の坪井川沿いにある「大衆タクシー」では会社敷地内に止めていた14台のタクシーと運転手らの自家用車数台が水没した。松尾地区は一帯が水につかり、床上浸水被害も出ている。
大衆タクシーの藤本剛社長(46)によると、11日午前1時半ごろ、会社敷地裏手の方から水が流れ込み、あっという間に止めていたタクシーなどが水に飲み込まれ、事務所にも水が流れ込んだ。土地が低いためか、雨がやんだあとの11日夕方まで水深10センチほどの水が残った。
藤本社長は「勤務歴の長い社員によると、ここが水につかるのは40数年ぶりということ。所有するタクシーの半数が水没してしまい、大変な状況だ」と声を落とす。「事務所の機械なども水にやられてしまった。残りのタクシーでなんとか営業を続けていき、お客様の要望には応えたい」と話した。【野呂賢治】
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