前線や低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、九州北部では10~11日に線状降水帯が相次いで発生し、記録的な大雨となった。気象庁は熊本県の7市町に11日、大雨特別警報を一時発表。各地で川の増水や崖崩れなどが発生し、熊本県では男性1人が死亡、女性1人が心肺停止の状態で見つかったほか、熊本、福岡両県で複数人が安否不明となっている。
大雨特別警報が出されたのは、熊本県の八代市▽玉名市▽上天草市▽宇城市▽天草市▽長洲町▽氷川町――。24時間の降水量は最大で、玉名市が453・5ミリと8月1カ月の平年降水量(180・7ミリ)の約2・5倍を記録したほか、熊本県山都町423・0ミリ▽八代市389・0ミリ▽熊本市中央区380・5ミリ――などを観測した。
熊本県災害対策本部などによると、甲佐町では11日午前、「車で逃げようとしていて土砂崩れに巻き込まれた」と119番があり、女性と子ども2人が救助されたが、女性の夫が行方不明となった。付近で11日午後に男性が見つかったが、死亡が確認された。八代市では11日午後、用水路に沈んだ車の中から高齢とみられる女性1人が心肺停止の状態で見つかった。
熊本市北区では、流された車に乗っていた男性が行方不明に。熊本市南区では「同居人が不在」との通報があり、外でバイクだけがあるのが見つかった。福岡県福津市でも10日午後、川で60代男性と女性が流されたとの119番があり、消防が捜索している。
八代市や天草市、美里町など6市町では計500人以上が孤立状態に。熊本城(熊本市)では、のり面の一部が崩れているのが見つかった。
国土交通省の12日午前8時時点のまとめによると、6日以降の大雨で秋田▽新潟▽富山▽石川▽島根▽山口▽福岡▽熊本▽鹿児島――の9県計41河川で氾濫を確認。土砂災害は8県で42件あり、新潟県佐渡市では住宅の損壊もあった。
また、熊本県の熊本市▽八代市▽玉名市▽上天草市▽宇城市▽天草市▽玉東町▽長洲町▽美里町▽氷川町――の計10市町に、災害救助法の適用が決まった。
交通機関にも影響が出た。JRでは鹿児島線荒尾(熊本県荒尾市)―玉名(同県玉名市)間、日豊線西都城(宮崎県都城市)―鹿児島(鹿児島市)間、肥薩線吉松(鹿児島県湧水町)―隼人(同県霧島市)間で土砂の流入や線路の土台の崩落などが発生。JR九州によると、復旧まで1週間以上かかる見込みという。
九州自動車道は松橋インターチェンジ(IC、宇城市)―人吉IC(熊本県人吉市)間の上下線で通行止めが続いている。
13日午後6時までに予想される24時間降水量は、多い所で中国地方70ミリ、近畿、九州北部60ミリ。気象庁は土砂災害に引き続き警戒するよう呼び掛けている。【中村敦茂、野呂賢治、栗栖由喜、後藤浩明】
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