プラスチック汚染根絶に向けた条約を話し合うためスイス・ジュネーブで開かれている国連の政府間交渉委員会は12日、各国の閣僚級による非公式会合が始まった。プラスチックの生産規制などを巡る主張の対立は5日の開幕から1週間たっても解消されていない。日本が橋渡しを買って出る場面もあったが、目立った進展のないまま会期末の14日が近づいている。
「非常に厳しい状況だ」。条文案の内容について小グループに分かれて議論が続いた11日、複数の交渉関係者はこう口をそろえた。
最大の争点である生産段階の規制を巡っては、欧州連合(EU)や島しょ国などが強い規制を求めているのに対し、プラ原料となる石油の産出国は生産段階の規制に踏み込まず廃棄物管理に絞った対策を主張し、溝は埋まる気配がない。
9日までは昨年11~12月の前回交渉委で示された議長案を出発点に、条文ごとに四つの小会合で内容が議論され、新たな条文案が提示された。しかし、合意に近づいた条文はほんの一部。異なる立場の意見が追加され、大量の保留事項が積み上がった。
太平洋島しょ国14カ国を代表して声明を発表したツバルは「1000個以上の保留事項があり、議論が後退しているのではと懸念する。一部の国が進捗(しんちょく)を遅らせるために故意に文書を膨らませているのは明らかだ」と、サウジアラビアなどの産油国側に対するいらだちをあらわにした。
産油国側を後押しするように、米国がプラ素材生産に関する条文に明確に反対していることも交渉を難しくさせている。日本はその条文の削除を求める産油国側にも配慮した中間的な案を提示したが、「議論は棚上げ状態で、むしろ両者の溝が鮮明になった」(日本政府関係者)。
閣僚級会合で潮目は変わるか。ある交渉関係者は「どこが相手の妥協点で、どこまで折れることができるのかがはっきりしない。議論は進んではいるがあまりに遅く、論点も多すぎる」と焦りを募らせていた。【ジュネーブ高橋由衣】
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