
「プラスチックごみに終着点はない。形を変えて、地球の表面をぐるぐると循環している」。早稲田大の大河内博教授(環境化学)はそう語る。
陸地から海へ流出したプラスチックは一部が大気へ、そして再び陸地に――。そんな循環の実態が近年明らかになってきた。スイス・ジュネーブでプラ汚染を防ぐ国際条約策定に向けた政府間交渉が進む今この瞬間も、目に見えない汚染は巡りながら蓄積している。
山頂の雪にも
プラスチックが劣化して細かく砕かれたマイクロプラスチック(MP)は一般に、採取用の網目の大きさから0・3~5・0ミリが対象となることが多い。大河内さんはさらに小さく、微粒子として空気中に漂う0・1ミリ以下のMPに着目する。
空気中のMPは世界で検出されている。発生源は廃棄物の埋め立て地や摩耗したタイヤ、人工芝など。海中のMPが波しぶきなどで舞い上がるケースも考えられるという。
浮遊するMPの微粒子は国境を越える。それを裏付けたのが大河内さんらの研究だ。地表からの影響を受けにくい富士山頂(標高3776メートル)の雲からMPを検出したのだ。
富士山頂付近の大気層は「自由対流圏」と呼ばれ、地表大気の物質は運ばれにくい。
だが、大河内さんらが2023年に発表した論文によると、富士山頂を含む山間部3地点で21~22年夏に採取した雲の水から1リットル当たり6・7~13・9個のMPが検出されたという。22年冬には山頂部に積もった雪にもMPが含まれることを確認した。
これらは一体、どこから運ばれてきたのか。
汚染の「ホットスポット」
大河内さんは、高温多湿で紫外線が…
Comments