オスの蚊の聴覚を錯乱し、メスと出合えなくすることで繁殖を防ぐ仕組みを見つけたと、上川内あづさ名古屋大教授(神経科学)らが発表した。この仕組みを応用すれば、殺虫剤を使わずに蚊が媒介する感染症を撲滅できると期待されるという。
蚊はさまざまな病気を媒介するため、主に熱帯地域で防除対策が急務になっている。地球温暖化で生息域が拡大する中、殺虫剤に耐性を持つ蚊も出現している。
研究チームは、デング熱やジカ熱などを媒介するネッタイシマカのオスの触覚に着目した。オスは触覚を揺らし、メスの羽音の周波数と一致させることで位置を把握し、交尾に成功することが知られている。しかし触角を揺らす仕組みは分かっていなかった。
触覚にあって耳の役割をする聴覚器を詳細に調べたところ、「オクトパミン」という神経伝達物質が聴覚器に入り、揺れを制御していることが判明。これを人為的に除いたり、働かないようにしたりすると、触覚をメスの羽音の周波数に合わせられなくなることが分かった。
オクトパミンが機能しないようにする化合物も見いだした。上川内さんは「化合物を餌に混ぜたり、スプレーで吹きかけたりすることで繁殖が防げる可能性がある。温暖化で日本でも蚊による感染症のリスクは高まっており、新しい蚊の防除対策を実現したい」と話した。
成果は米科学誌「アイサイエンス」に掲載された。 https://doi.org/10.1016/j.isci.2025.113202。【渡辺諒】
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