
家庭や行楽でおなじみの魔法瓶。飲み物の温度を長時間保てる働きが、まるで魔法のようであることから名付けられたとされる。近年、魔法瓶をはるかに超える断熱性能を持つ魔法の素材が開発されている。どんな素材なのか。
白い粉末を約2ミリの薄さで手に塗り、その上からバーナーで約1300度の炎を当てる。通常ならすぐにやけどをしてしまうが、全く熱さを感じるそぶりはない。
これは、物質・材料研究機構(NIMS、茨城県つくば市)が公開している動画の一幕だ。台湾出身のウー・ラダー主任研究員が開発した「TIISA(ティーサ)」という新素材だという。
「この動画を見ると、皆さんが驚きます」。ウーさんが自分の手で実際に実験してみせることもあるという。
粉末の正体は、エアロゲルと呼ばれる特殊な物質だ。
ゲルとは、分子や粒子が網目状につながり、その間が液体で満たされている物質だ。ゼリーやこんにゃくなど、身の回りに多く存在する。
液体を空気で置き換えたものを、エアロゲルという。分子の間にナノメートル(ナノは10億分の1)サイズの微小な多数の穴があり、その間に空気を含むため、非常に軽い。こうした構造から「固体の雲」とも呼ばれる。
エアロゲルの素材には通常、二酸化ケイ素(シリカ)が使われる。ティーサは通常のエアロゲルよりもさらに軽くて密度が低く、同じ重さのエアロゲルと比べ、最大10倍もの体積がある。
その秘密…
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