
12歳以下の国際大会「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」が、19日から千葉市のフクダ電子アリーナで開かれる。世界の強豪クラブに交じり、内戦下のミャンマーからも代表チームが参加する。閉塞(へいそく)感の中で暮らす子どもたちに、サッカーを通じて世界とつながる経験をしてほしいと、関係者は願っている。
大会は国内外の40チームで争われる。海外からは6チームが招待され、スペインの名門FCバルセロナなどとともに、ミャンマー代表が3大会連続で出場する。

ミャンマー代表をバックアップしているのは、一般社団法人「グローバルブリッジプラス」代表理事の松下裕二さん(50)。かつてクレジットカード会社「JCB」で海外事業を担当し、ミャンマー駐在などを通じて現地のサッカー関係者と人脈を築いてきた。
松下さんは「サッカーを通じて世界とつながることで、ミャンマーの子どもたちが未来に希望を持てる機会になれば」と話す。
サッカーはミャンマーで最も人気のあるスポーツの一つだ。だが、学校に体育の授業や部活動はない。地方では、何時間も歩いて学校に通う子どももいる。「ほとんどがストリートでサッカーをしている」という。そうした子らを集めて選考会を開き、選ばれた18人が来日する。
新型コロナウイルスやクーデターの影響で何度も参加が見送られたが、初出場した2023年の大会ではFCバルセロナと対戦。名だたる強豪を前に緊張は隠せなかったが、相手ゴールを脅かす場面もあった。昨年は予選リーグを首位で突破し、決勝トーナメントに進んだ。

活躍はミャンマーでも報じられ、出場した子どもたちの自信になった。「日本へ行けば、世界のトップチームと戦える」と後に続く子らも刺激を受け、今では「Road to JAPAN」が合言葉となっているという。
現実に目を向ければ、ミャンマーの置かれた状況は厳しい。クーデターに抵抗する民主派勢力と国軍の内戦は泥沼化し、今年3月には大地震にも見舞われた。「こんなときにサッカー交流なんて」との声もある。それでも松下さんは「こんなときだからこそ、子どもたちに夢をあきらめてほしくない。困難な状況に少しでも風穴を開けることができれば、その経験が人生を変えるきっかけになる」と語る。
大会後はJリーグ観戦や鎌倉観光、ホームステイなどの交流も予定している。「サッカーだけでなく、同年代の日本の子どもと『また会おうね』という関係を作ってほしい」と松下さん。費用面の課題はあるものの、企業や知人らの支援に加え、クラウドファンディングも活用しながら準備に奔走している。【小泉大士】
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