
夏の強い日差しが照り付ける。ポーランド北東部イエドバブネ市。ナチス・ドイツ占領下の1941年7月10日、ここで300人以上とみられるユダヤ系住民が他のポーランド住民によって納屋に押し込められ、生きたまま焼かれた。84年後の週末、この地を訪れると、犠牲者の追悼に来た人たちが現場に建てられた碑に花を手向けていた。
世界は第二次世界大戦をどう総括しているのか。政治や社会、歴史認識が複雑に絡み合う各国の戦争博物館の現場から報告し、戦後80年を迎える日本でも考えたい。
住民たちは第二次世界大戦後、このいまわしい過去について沈黙を守ってきた。事態が動いたのは2000年。ポーランド出身の米プリンストン大研究者、ヤン・グロス氏が執筆した書籍「隣人」によって、ユダヤ人虐殺の事実が広く知られるようになった。
グロス氏は広範な調査を進め、ナチスとソ連に侵略された「被害国」としてのポーランドのイメージを打ち破り、初めて本格的にポーランド人による「加害」の側面に踏み込んだ。
保守派は「ナチス占領下のポーランド人に罪はない」などと反発し、ポーランド中で議論が巻き起こった。01年…
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