昭和天皇は我々の社会にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。「『昭和天皇拝謁記』を読む」(岩波書店、共著)の著書があるジャーナリストの吉見直人氏に聞きました。【聞き手・須藤孝】
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――敗戦後に昭和天皇が退位しなかったことは戦後の日本社会のあり方に影響しました。
◆昭和天皇の生涯は私たちにとって自分たちの社会を反省する材料になります。これはあくまで私の推測ですが、昭和天皇が退位をしなかったのは、退位すれば戦争終結を遅らせたという責任を認めることになってしまうと考えたからだと思っています。
昭和天皇が退位しなかったことで社会が安定し、その後の高度成長の基盤になったことは確かです。一方で全国各地にいた、戦争を実質的に支えた町の大人たちもみな、責任を問われないままになりました。政府や軍の指導者ら一部の特別な人たちだけのことではありません。多くの一般の人たちも同じです。退位をしない昭和天皇の利害は当時の日本の大人たちの利害と一致していたのです。
敗戦直後は日本中の多くの人たちが自分たちの責任がどう問われるのか、不安に思っていました。極東国際軍事裁判(東京裁判)や、…
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