/443 上田岳弘 倉田悟・絵

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 その想像は、不思議なほど鮮明だった。轟音(ごうおん)をたてて、飛んでいく飛行機。どこまでも高く、何よりも速く、どんな高い壁をも越えて、それは飛んでいく。たくさんの飛行機の内には、いつか私の研究所が生み出した、駄目な飛行機も混ざっている。胸の内に温かいものが生まれ、それが全身にゆっくりとしみわたっていった。こちらの世界には壁がない。少なくとも飛行機で越えられないほどの高さのものは。こちらの世界(﹅﹅﹅﹅﹅﹅)、つまり私が今いる世界。

 壁がないということは、私は、どこまでも遠くに行ける。

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