所蔵写真展の底力=東京大大学院教授・今橋映子(比較文学比較芸術)

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東京大大学院教授・今橋映子(いまはし・えいこ)

 ベルリンの壁が崩壊した1989年、大学院生だった筆者はパリで、「ダゲレオタイプ」発明150年を記念する大々的な写真展を偶然に観(み)た。今でも思い出すのは、写真を「美術館で」取り上げようという挑戦的な試みに対する、観客たちの興奮である。それから時を経て、現在では当たり前のようになっている「美術館での写真鑑賞」だが、実はなかなか奥が深い。

 東京都写真美術館(以下、写美)は、恵比寿での総合開館から今年で30周年を迎えた。現在の所蔵作品数は3万8000点を超えるという。経済的な困難もいろいろと乗り越えながら収蔵された作品群を自由に使いながら、今年度二つの所蔵品展――(1)「不易流行」(4~6月、終了)と(2)「トランスフィジカル」(現在開催中、9月21日まで)が開かれている。コロナ禍を通して多くの美術館は、身近にある「収蔵品」の価値を…

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