高校野球・夏の甲子園2回戦(14日)
○横浜(神奈川)5―1綾羽(滋賀)●
心地よい捕球音が響いた直後、スタンドはどよめいた。
電光掲示板に152キロの表示。1点を追う四回からマウンドに上がった横浜の織田翔希は、3万5000人が詰めかけた球場の雰囲気を1球で変えた。
序盤は劣勢だった。
甲子園初登板の先発・池田聖摩(しょうま)は一回に連打を浴びるなどして先制される。攻撃もホームが遠く、もどかしい状況の四回、ベンチから見守っていた織田に出番が来た。
「力強いボールを見せる」。気持ちがこもった1球目は、指の引っかかりも手応え抜群だった。
相対した綾羽の川端一透(いちと)は「手が出なかった。上から振り下ろして、伸びてきた」。
「意識していなかった」という球速も自己最速タイを記録し、村田浩明監督に与えられた「悪い流れを変えてこい」というミッションに、1球で応えた。
直後の五回はバットで見せた。2死二塁で「思い切り振るだけ」とやや内角の直球に振り負けず、中前へ自らを援護する同点打を放った。
投球と打撃は相互に好影響を与え、140キロ台後半の直球を内外角に投げ分け、相手の流れを完全に断ち切った。
被安打3、無失点で九回2死までマウンドを守り抜き、試合後は「緊張せず、自信を持って投げられた」と力強かった。
織田にとって飛躍の夏を迎えている。きっかけは、偉大な先輩のひと言だ。横浜OBの松坂大輔さんから「視野を広くした方がよい」と助言を受けた。打者との勝負ばかりに集中していた自分を見直すきっかけになった。
「野球は投手から始まるスポーツ。まずは自分が100%楽しむ」と、試合中の声かけや笑顔を意識し、気持ちの余裕が生まれた。
1回戦で、松坂さんも成し遂げていない2年夏の甲子園での完封を達成したのに続き、流れを変える快投。名門に新しい歴史を積み上げる右腕の存在感は、試合ごとに大きくなっている。【川村咲平】
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