「合わないので…」綾羽監督の定位置はベンチど真ん中 夏の甲子園

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【綾羽-高知中央】綾羽の千代純平監督=阪神甲子園球場で2025年8月8日、長澤凜太郎撮影 拡大
【綾羽-高知中央】綾羽の千代純平監督=阪神甲子園球場で2025年8月8日、長澤凜太郎撮影

 開催中の全国高校野球選手権大会で、春夏通じて初の甲子園出場で白星を挙げた綾羽(滋賀)。

 母校を甲子園に導いた千代(ちしろ)純平監督(36)の定位置はベンチの中央と決まっている。

 甲子園で最も遅く始まり、終了時刻も最も遅くなった8日の1回戦。延長十回タイブレークの末に高知中央から劇的勝利を収めた試合でもそうだった。

 「自分には合わないので……」

 その真意にこそ、快進撃の原動力が凝縮されている。

【綾羽-高知中央】最も遅い終了時間となった全国高校野球選手権大会第4日の高知中央と綾羽の試合=阪神甲子園球場で2025年8月8日午後10時46分、藤井達也撮影 拡大
【綾羽-高知中央】最も遅い終了時間となった全国高校野球選手権大会第4日の高知中央と綾羽の試合=阪神甲子園球場で2025年8月8日午後10時46分、藤井達也撮影

明るく前向きなチームで

 定位置を中央へと変えたのは、昨年だった。

 それまでは「(相手チームに)サインを見られたらダメだと思っていた」とベンチの端に身を寄せていた。

 しかし「コソコソするのは自分には合っていない」と、立ち位置を変えた。

 「明るく前向きに」をスローガンに掲げるチームで、積極的に選手とコミュニケーションを図り、持てる力を引き出すのが自身の役目だと気づいた。

 甲子園初登場となった1回戦では1点を追う九回の攻撃前に選手を集めた。

 「ほら、お月さん見ろ」

 甲子園の大時計は午後10時を指そうとし、上空の円い月が球場を照らしていた。

 「甲子園で野球しながらお月さんを見られることはないぞ。ホンマ幸せなんやから最後しっかり攻撃しようぜ」

 冗談も交えた。

 「ツキが向いてくるぞ」と。

【綾羽-高知中央】延長タイブレーク十回表綾羽無死一、二塁、北川陽聖が2点適時三塁打を放つ=阪神甲子園球場で2025年8月8日、藤井達也撮影 拡大
【綾羽-高知中央】延長タイブレーク十回表綾羽無死一、二塁、北川陽聖が2点適時三塁打を放つ=阪神甲子園球場で2025年8月8日、藤井達也撮影

 チームの雰囲気が和んだ瞬間だった。

 九回の攻撃は2本の安打と死球で2死満塁の好機を作った。代打の川中雄人選手(3年)が放った遊ゴロが相手のミスを誘い、同点に追いついた。

 無死一、二塁から始まる延長十回タイブレークの先頭は頼りになる主将の1番・北川陽聖(ようせい)選手(3年)だった。

 千代監督は迷いなく強攻策を選択。北川選手は期待に応え、右中間を破る2点適時三塁打を放ち、この回一挙4点を奪った。

【綾羽-高知中央】力投する綾羽の3番手・藤田陸空=阪神甲子園球場で2025年8月8日、長澤凜太郎撮影 拡大
【綾羽-高知中央】力投する綾羽の3番手・藤田陸空=阪神甲子園球場で2025年8月8日、長澤凜太郎撮影

 「今日はおまえの日だぞ」

 そう鼓舞していた3番手の左腕・藤田陸空(りく)投手(3年)が締めて、逃げ切った。

 初勝利をつかんだ千代監督は「本当に特別な日。人生で初めて味わう日です」と感慨深げに語った。

 2回戦は大会第9日の14日、第3試合でセンバツ王者の横浜(神奈川)と対戦する。【村上正】

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