
戦後80年の節目に、中国政府は日中戦争の記憶とどう向き合おうとしているのか。そのことを知るために北京市郊外、盧溝橋のほとりにある「中国人民抗日戦争記念館」を訪ねた。
ここは1937年7月7日、日中全面戦争の発端となった「盧溝橋事件」が起きた歴史的な場所だ。87年に開設された記念館は「全国で唯一、抗日戦争の歴史を包括的に展示する国家1級博物館」とされる。
中国政府は2025年を「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80年」と位置づけており、記念館では特別展が開催中だ。
来場者を迎える「序文」には「凶暴な日本の侵略者と民族存亡の瀬戸際に直面し、中国共産党は卓越した政治指導力によって抗日戦争を先導した」とあった。
1・2万平方メートルに及ぶ展示は一貫して、共産党がいかに大きな役割を果たし、戦勝国の地位を築いたかに焦点を当てていた。旧日本軍が37年に多数の中国人を殺害した「南京大虐殺」や、細菌兵器開発のために中国人捕虜らの人体実験をした「731部隊」などの残虐行為は、展示の中盤で特集されていた。
中国政府が日中戦争を語るうえで最も重視するのが「党の功績」であることは、習近平国家主席の異例の行動からも分かる。
盧溝橋事件発生から88年にあたる今年の7月7日、習氏が姿を現したのは…
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