
不審な発言や行動がいつ誰に密告されてもおかしくなかった。
投書やビラはもちろん、トイレの落書きから井戸端会議でのひと言まで。
その対象は子どもも例外ではない。
連載「戦時下ですから」は全7回のシリーズです。
次回は 刺突訓練、拒んだ兵士の悔恨
16日午前11時アップです。
替え歌で校長が注意される
<金鵄(きんし)上がって十五銭 栄(はえ)ある光 三十銭 はるかに仰ぐ鵬翼(ほうよく)は 二十五銭になりました ああ一億は皆困る>
戦意高揚のために1940年に作られ「金鵄輝く日本」の歌い出しで始まる「紀元二千六百年」。その替え歌で、長引く戦争の影響によって「金鵄」や「鵬翼」といったたばこの銘柄が値上げされたことをユーモア交じりに嘆いている。
「反戦反軍事件」の一つとして、特別高等警察(特高)は自らの活動を記録した内部資料「特高月報」に、この替え歌を歌った13歳の少年の住所や名前を載せた。
埼玉県の幸手国民学校に通う野口猛さん。右半身にまひがあり、強い兵士が求められた戦時中に周囲から「ごくつぶし」と言われたこともあった。
43年4月の月報には、野口さんが自宅付近で友人数人と遊んでいる時に「反戦時童謡」を歌ったとして校長に注意したと記されている。
幸手国民学校に通っていた野沢秀吉さん(92)は「大人が言うのを聞いて…
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