80回目の終戦の日を迎えた15日、政府主催の全国戦没者追悼式が東京都千代田区の日本武道館で開かれた。天皇、皇后両陛下や石破茂首相らが参列。日中戦争や第二次世界大戦で犠牲になった約310万人を悼んだ。天皇陛下はおことばで「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」と記憶の継承を明確に示す文言を初めて盛り込んだ上で、「私たち皆で心を合わせ、平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います」と述べられた。
式典では正午の時報に合わせ、参列者が1分間の黙とうをささげた。陛下はおことばの中で「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い」と上皇さまから受け継ぐ思いを今年も述べ、世界の平和を願った。
石破首相は式辞で「今では戦争を知らない世代が大多数となった。戦争の惨禍を決して繰り返さない。進む道を二度と間違えない。あの戦争の反省と教訓を、今改めて深く胸に刻まねばならない」と述べた。また、「歳月がいかに流れても、悲痛な戦争の記憶と不戦に対する決然たる誓いを世代を超えて継承し、恒久平和への行動を貫く」と表明した。
ロシアによるウクライナ侵攻など緊迫化する世界情勢にも触れ、「分断を排して寛容を鼓し、より良い未来を切り開く」と強調した。
遺族を代表しての追悼の辞は、朝鮮海峡で陸軍兵士だった父を亡くした埼玉県川越市の江田肇さん(82)が述べる。
厚生労働省によると、付き添いを除く参列予定の遺族は3432人。新型コロナウイルス禍を経て5年ぶりに従来並みの規模となった前年より約200人増えたものの、4989人が参列したコロナ禍前の2019年よりも少なくなった。
参列遺族も高齢化が進み、戦没者の配偶者は4年ぶりにゼロとなった。おいやめい、孫といった戦後生まれの割合は年々増加。今回は約53%で過去最高となる。遺族の最年長は98歳の戦没者の弟。きょうだいは86人が参列する予定。
日中戦争と第二次世界大戦では軍人・軍属230万人、民間人80万人が犠牲になった。海外での戦没者のうち半数近い112万人分の遺骨を今も収容できていない。【肥沼直寛】
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