全国戦没者追悼式のおことばで天皇陛下は「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」との一節を新たに加えられた。
記憶の継承に明確に言及。戦後80年の今年、記者会見などで戦争の惨禍を語り継ぐ大切さを繰り返し伝えており、追悼式での言葉にもその思いがにじむ。
戦後生まれの陛下は、上皇ご夫妻から戦時中の話や平和への思いを幼少期から聞いてきた。
今年は皇后雅子さまとともに硫黄島、沖縄、広島、モンゴルで戦没者を慰霊。国内では、戦争体験者や歴史を語り継ぐ若い世代と交流を重ねる。
沖縄には長女愛子さまを伴い、世代間での継承を印象づけた。
追悼式のおことばは、上皇さまが平成の時代に練り上げた非戦への思いや表現を踏襲している。犠牲者を悼み、戦後の人々の苦難の歩みに思いを寄せ、世界の平和を願う内容だ。
戦後70年だった2015年、上皇さまは初めて戦争に対する「深い反省」との文言を盛り込み、記憶の風化に警鐘を鳴らした。
今年の追悼式で陛下は「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ、私たち皆で心を合わせ、平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願う」と述べた。
宮内庁関係者は「節目の年に歴史と改めて向き合う思いで各地を訪ねておられる。戦争を語り継ぐ人々との出会いを心に刻みながら考えられたおことばだと思う」と話している。【山田奈緒】
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