韓国の李在明(イジェミョン)大統領は15日、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典の演説で、韓国が厳しい国際経済環境下にあると訴えた。その上で日本との協力が韓国の発展につながることを強調しただけでなく、南北に関しても「(対立は)我々の暮らしを脅かし、経済発展を制約する」と緊張緩和の必要性を主張した。
トランプ米政権の関税政策や米中対立によるサプライチェーンの再編、先端技術競争といった国際課題に立ち向かう上で、日韓も南北も関係を安定させなければ韓国の発展は難しいという認識を前面に打ち出す狙いだ。
李氏は演説で「私たちは今、巨大な変化の『渦』の中にいる」と述べ、「変化する国際情勢に追いつけず、国権を奪われた120年前の過ちを繰り返すことはできない」と強調した。
李氏は日韓が相互信頼を基盤として未来のために協力すれば、「国際的な人工知能(AI)技術の競争を乗り越えられる」との持論も展開。李政権は経済や科学技術に関する政策に力を入れ、特にAI技術の発展を重要視しており、大統領府にAI政策を統括する「AI未来企画首席」を新設している。
李氏は23~24日に就任後初めて訪日する予定で、石破茂首相と協力推進の意思を確認する見通し。首脳会談では、対米関係のほか日韓間の具体的な協力案件も議題となる可能性がある。
一方、演説では南北関係についても多くの時間を割いた。北朝鮮との「緊張緩和と信頼回復」のための具体策としては、軍事境界線付近での敵対行為の禁止などを定めた南北軍事合意の効力を段階的に復元すると訴えた。
軍事合意は南北融和を掲げた進歩系の文在寅(ムンジェイン)政権下の2018年に締結されたが、保守系の尹錫悦(ユンソンニョル)前政権が24年6月に相互信頼が回復するまで効力を全面停止すると決定していた。
ただ、李氏は演説で「短期的に解決はできない複雑な問題」としつつも北朝鮮の非核化の必要性は強調した。北朝鮮は7月以降、韓国との対話を明確に拒否しているほか、「非核化」という言葉にも強く反発する談話を発表しており、李氏の演説が南北の関係改善につながる可能性は高くなさそうだ。【ソウル日下部元美】
Comments