高校野球・夏の甲子園2回戦(15日)
○明豊(大分)6―1佐賀北●
待望の「H」ランプを聖地でともしたヒーローが、派手に何度も拳を突き上げた。明豊の辻田拓未が均衡を破る3点適時二塁打を放ったのは、五回だった。
捕手らしい読みが光った。
1死満塁で打席に入り、佐賀北の先発・稲富理人に対して「外角への制球が良く、そこを中心に攻めてくるはず。しっかり踏み込んで打とう」。カウント1―1からの3球目。外角低めの136キロを力強く振り抜くと、鋭い打球が中堅手の頭上を越えた。
塁上で感情が高ぶったのには理由がある。
1回戦の市船橋(千葉)戦はチーム全体で12安打を放ったが、先発9人のうち辻田だけが無安打だった。
試合後、チームメートからは「『やばいわ』『大丈夫か』と冗談交じりに声をかけられた」と辻田は笑う。
捕手として複数投手をリードする守りの要ということもあり、辻田自身は「打撃にばかり気持ちがいくのはだめ。打てなくても、相手に1点も与えなければ負けない」と冷静だった。
ただ、本心は「早く打って楽になりたかった」。
大分大会では1年生捕手に先発マスクを譲る機会が多く「屈辱的。野球を嫌いになりかけた」と振り返る。それでも「自分がくじけたらチームがマイナス方向に行く。できることをやる」と自らを奮い立たせた。
2回戦前日の14日は18歳の誕生日。逆境に真っすぐ向き合った辻田に待っていたプレゼントは、仲間からのプロテインと1日遅れの聖地でのお立ち台だった。
「人生で一番いい誕生日になった。最高の夏です」
辻田と明豊のアツい夏は、まだまだ続く。【角田直哉】
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