「おいしすぎるアフリカ料理」話題 初代大統領の元専属シェフが調理

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キッチンカーで料理の説明をするエミール・イルブードさん=東京都品川区で2025年7月25日午後0時29分、古川幸奈撮影
キッチンカーで料理の説明をするエミール・イルブードさん=東京都品川区で2025年7月25日午後0時29分、古川幸奈撮影

 アフリカ開発会議(TICAD)が20日、横浜市で開幕する。6年ぶりの国内開催で、日本とアフリカの友好促進にも期待がかかる。

 そんな中、交流サイト(SNS)上で「おいしすぎるクスクス」として話題になっているキッチンカーがある。西アフリカ・コートジボワール初代大統領の元専属料理人が手がける店で、特にクスクスの味が評判だ。

 「たまたまアフリカ料理のフードトラックを見つけてクスクスを食べたら、めちゃくちゃおいしい。調べたら、大統領の元専属料理人がやっていた。おいしすぎるクスクス……」

 7月下旬、X(ツイッター)に投稿されたこのポストはたちまち拡散され、表示回数は約50万回に達した。

大統領専属から日本へ

ギニア、ブルキナファソ、コートジボワール
ギニア、ブルキナファソ、コートジボワール

 キッチンカーを営むのは、西アフリカの内陸国ブルキナファソ出身のエミール・イルブードさん(66)。幼い頃、家族旅行で見た白くて長いコック帽に憧れ、17歳で隣国コートジボワールのアビジャンにある料理学校に進学した。北アフリカのモロッコで研修を受け、旧宗主国のフランスで本場のフレンチも学んだ。

 転機は卒業後に働いていたホテルで訪れた。「建国の父」として知られるフェリックス・ウフエボワニ初代大統領のパーティーで提供したヤムイモの創作料理が評判となり、政府関係者からスカウトされた。

 数人のシェフでローテーションを組み、健康志向の大統領に合わせたメニューを考案。お気に入りは、鶏肉と野菜を煮込んだコートジボワールの家庭料理「ケジェヌ」や、鶏肉とタマネギのマスタード煮「チキンヤッサ」だった。

 1993年に大統領が亡くなり、エミールさんらのチームは解散。複数の推薦先の中から、日本での勤務を選んだ。当時、日本との接点は愛用していたホンダのバイクだけ。それでも「何年も乗っていたバイクが一度も壊れなかった。日本は『良い仕事をする国』というイメージがあり、行ってみたいと思った」と話す。

日本で広める母国の味

人気メニューのケジェヌ・チキンについて説明するエミール・イルブードさん=川崎市で2025年8月2日午後1時47分、古川幸奈撮影
人気メニューのケジェヌ・チキンについて説明するエミール・イルブードさん=川崎市で2025年8月2日午後1時47分、古川幸奈撮影

 来日後はコートジボワール、ギニア、ブルキナファソの在日大使館に勤務。その間、大使館のパーティーに参加した外交関係者から、「日本では大使館以外で本格的なアフリカ料理を食べられる場所がほとんどない。レストランを作ったらどうか」と勧められた。

 もともと「母国の料理を伝えたい」という思いがあった。2004年、友人らと東京都内にアフリカ料理店「カラバッシュ」を開業。大使館業務の合間に始めたケータリングも人気を集めた。

 やがて別の飲食店の立ち上げにも関わるようになり、多忙になったため大使館を退職。約12年前から都内や周辺でキッチンカーを始めた。店名は西アフリカの言葉で「歓迎」を意味する「FOFO」にした。

 発酵豆のソースで炊いたご飯に肉や野菜をトッピングした「スンバラライス」、クスクスにトマトソースを絡め、鶏肉と野菜を添えた「クスクスオプレ」、そしてウフエボワニ元大統領が好きだったチキンヤッサ。ランチタイムには、周辺で働く会社員らの行列ができる。

料理で広がる友情

エミール・イルブードさんがキッチンカーで提供するクスクスオプレ=2025年7月25日午後0時28分、古川幸奈撮影
エミール・イルブードさんがキッチンカーで提供するクスクスオプレ=2025年7月25日午後0時28分、古川幸奈撮影

 「ブルキナファソのことを知らなかったら『なんとなく怖い』と思うかもしれない。でも、その国の料理を食べたことがあれば親しみがわくでしょう。国の名前を覚えてくれるだけでうれしい」とエミールさん。

 オフィスやイベントへのケータリングも人気で、日本の若者からの依頼も多い。「以前は政府や大使館の幹部に料理を作ることが多かった。今は若い人たちにも母国の料理を楽しんでもらえて幸せ」と笑顔を見せる。

 収入の一部は母国での学校建設に充て、現在は3校目を建設中。「最後は料理の専門学校を作り、そこで日本語も学べるようにしたい」という。

 TICADの開幕を前に、関係団体からの注文も相次ぐ。エミールさんは「アフリカと日本のフレンドシップを深めるチャンス。この機会に食を通じてアフリカ文化を感じてほしい」と期待を込めた。【古川幸奈】

ブルキナファソ

 サハラ砂漠の南に位置する西アフリカの内陸国。1960年にフランスから独立し、84年に「高潔な人々の国」を意味する現在の国名に変わった。首都はワガドゥグ。面積は日本の約4分の3にあたる約27万平方キロ。人口は2325万人で60以上の多様な民族が暮らす。主要産業は農業だが、金の輸出もさかん。

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