ここしか会えない動物も 新園長に「魅力」聞く 埼玉県動物自然公園

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屋内展示施設で過ごすクオッカ=埼玉県東松山市の埼玉県こども動物自然公園で2025年3月13日、新宮巳美撮影 拡大
屋内展示施設で過ごすクオッカ=埼玉県東松山市の埼玉県こども動物自然公園で2025年3月13日、新宮巳美撮影

 「埼玉県こども動物自然公園」(東松山市)は、コアラに代表されるようなさまざまな動物の飼育・展示で知られている。ライオンなどの猛獣や、ゾウといった大型動物はほとんどいないけれど、笑顔のような表情を見せることから“世界一しあわせな動物”の異名を持つクオッカなど、国内では同園でしか出会えない珍しい動物も数多く飼育している。ひと味違った動物園の園長に、今年4月に就任した野口幸子さん(59)が手掛けていきたいこととは?【仲村隆】

 ――園の特徴を教えてください。

 ◆比企丘陵の豊かな自然に包まれていることです。1980年の開園当初は家畜と少数の鳥類を飼育する小規模な園でしたが、現在は約150種もの動物が暮らしています。家畜をテーマにした施設を中心に、動物に触れたり、暮らしや習性を直接見たりするユニークな施設が各所にあります。

 ――来園者も様変わりしています。

 ◆動物園は子ども向けという印象が強いですが、最近はシニア世代も目立ちます。カピバラやコアラ、マヌルネコといった動物に癒やしを感じられるのか、コアなファンも増えています。

県こども動物自然公園の園長に就任した野口幸子さん=埼玉県東松山市の同園で2025年7月11日、仲村隆撮影 拡大
県こども動物自然公園の園長に就任した野口幸子さん=埼玉県東松山市の同園で2025年7月11日、仲村隆撮影

 ――動物園で働くようになった経緯は?

 ◆生まれ育ったのは農村地帯です。野生動物と接する機会が多い環境でしたので動物を飼う仕事に魅力を感じ、この道に入りました。実際に飼育係になると世話だけではありません。金づちを振って飼育施設を修繕したり、動物のイベントを手掛けたりと、動物を可愛がるだけの仕事でないことを教えられました。

 ――動物園の役割をどのように考えていますか。

 ◆繁殖技術の確立・希少動物の研究▽大学など研究機関との共同研究、生態などの研究活動▽教育活動――の三つの大きな役割があります。これまでに絶滅の恐れのある希少鳥類の保護繁殖のほか、コアラ、レッサーパンダ、マヌルネコなどの繁殖を成功させました。中でもアマミトゲネズミの保全活動は、将来の野生復帰を目指した繁殖技術が注目されています。また、2019年からWAZA(世界動物園水族館協会)に加盟したので、世界の動物園や水族館とのネットワークを生かし、飼育動物の繁殖や、希少動物の保護、研究などを進めています。

 ――国内の動物園とも協力しています。

 ◆他の動物園と協力し、繁殖を目的にコアラなどの貸し借りをするブリーディングローンを活発に行い、成果を上げています。また、全国5動物園からカピバラが出場して「第10回スイカの早食い競争」が先日開催されましたが、この園から出場した6歳の雌のヘチマが4連覇しました。冬には「カピバラの長風呂対決」などを行い、さらに動物園の魅力アップを目指しています。

 ――クオッカが人気を集めているようですね。

 ◆クオッカ来園5周年を記念するイベントを開催しています。寄付で施設整備を行う「アニマル基金」では目標の1000万円を上回る1114万円が寄せられ、今年3月に専用の屋内展示施設ができました。クオッカは人気上昇中ですが、まだコアラほど認知度は高くはありませんのでPRしていきます。

 ――これから力を入れたい分野は?

 ◆子どもたちが動物と触れ合う体験を大事にしていきたい。牛の乳搾り体験もできます。このような体験は情操教育だけでなく家畜への理解や食育にもつながります。動物がより快適に、ストレスの少ないようにするアニマルウエルフェアに配慮しながら、子どもが動物から多くを学ぶ教育の場としての役割を果たしていきます。

人物略歴

野口幸子(のぐち・さちこ)さん

 1965年生まれ、熊谷市出身。東京都内の動物飼育の専門学校に進学。在学中に県こども動物自然公園での実習をきっかけにアルバイトとして働き始める。89年に職員に。狭山市立智光山公園こども動物園園長、県こども動物自然公園副園長などを歴任し、今年4月から現職。

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