「共働き子育てしやすい街ランキング 全国1位」――。神戸市がデジタルサイネージ(電子看板)による広告を兵庫県明石市内の駅で展開している。両市は10年以上前、移住者獲得を巡って数年にわたってPR合戦を展開した因縁があるが、神戸市の担当者は「通常の広報戦略の一環。何かを狙ってということではない」と特別な意図は否定している。
神戸市広報戦略部によると、広告は、その時期に力を入れてPRしたい施策やトピックなどを選んで打つようにしている。駅構内でのデジタルサイネージは、明石駅以外に阪急西宮北口駅(西宮市)、JR大阪駅(大阪市北区)でも流している。
今回は2024年末、働く女性向けのウェブメディアなどの調査で「共働き子育てがしやすい街」に神戸市が初めて1位を獲得したのを受けた。発表直後から広告を流し、市情報サイト「こどもっとKOBE」への誘導するのが狙いだ。
「ケンカを売っている」と話題に
前回のバトルは、泉房穂氏(現参院議員)が11年に明石市長に就任してから始まった。「子育てを核とするまちづくり」を掲げ、こども医療費の無料化(13年)をはじめとする「五つの無料化」といった支援策を打ち出し、若者・子育て世代の移住を促した。その中で泉氏が神戸市に乗り込んでトップセールスしたり、広報紙で近隣との施策の違いなどを特集したりした。
対する神戸市は21年には「家どこ? って言われて神戸の方とかいうぐらいやったら神戸に住んだ方がええな。」と大書きされたポスターを明石市内に掲示し、交流サイト(SNS)では当時「ケンカを売っている」と話題になった。
この間、明石市は20年に人口が30万人を突破し、増加を続けている。一方、神戸市は23年に人口が150万人を割り込んだ。明石市への転入者を市郡別でみると、神戸市からが半数を占めている。
明石市の丸谷聡子市長は今回の件について、取材に「日本全体として人口が増えないといけないと思っているので隣同士で人口を取り合うことより、もっとしっかり産み育てたいまちを一緒につくっていくということのほうが大事だ」とコメント、静観する構えだ。【入江直樹】
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