
ノンフィクションライター・中澤まゆみさんの連載「最期まで私らしく~知っておきたい在宅の医療・ケア~」。今回のテーマは、国の制度である介護保険制度の課題に対する、自治体の向き合い方です。
「ヘルパーが見つからない」
認知症の夫を介護している東京都内の友人が、交流サイト(SNS)にこんな投稿をしていました。
「今朝、ヘルパー事務所から<担当者がコロナにかかったため今日のサービスに入れません。代わりのヘルパーも見つかりません>と連絡が。ウチは80代と90代の老々でも私がいるから何とかなるけれど、一人暮らしの人はどうするの?」
友人が利用しているのは、大手の訪問介護事業所です。「今までは何とか手配してくれたのに……」と、人材不足による介護の先行きを心配する文面が続きます。
「ヘルパーが見つからない」「依頼があっても受けられない」――。介護の利用者・提供者の両方からこうした声を聞くことが、いっそう増えてきました。
訪問介護事業者の倒産はうなぎ登りです。2025年1~6月の半年で全国で45件。この時期としては、2年連続で過去最多を更新しています。
集計した東京商工リサーチは、物価高が続くのにコストの削減が難しいため、「自力での経営改善は限界」だとして、国や自治体による公的支援が必要と訴えています。
国の保険制度で運営する介護事業に対して、自治体が独自の支援事業を行うことについては、自治体の裁量や財政力によって地域格差が生まれるので好ましくない、という意見もあります。
しかし、「そんなことを言ってはいられない」と、独自の介護事業所支援に踏み込む自治体も出てきました。
陳情から始まった世田谷区の独自支援
東京都世田谷区は24年、1事業者あたり88万円など、約1600の介護・障害事業所に緊急給付金を支給しました。
きっかけは、同年6月に提出された市民…
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