そして、その荒れ果てた人間界をうまく治めた神の血を継ぐのが王族であって、だからこそ、民草は彼らに統治されなければならないし、王はその上に立つ正統性を有する。枝葉は様々で、表現もいろいろだが、大抵の創世神話の建て付けはそんなところだ。
しかし、もしかしたら、そんな風に王権の正統性を担保するための物語は後付けであるかもしれない、と昔ふと考えたことがあった。人々はただ、この世界がどんな風に生まれたのかを理屈づけようと、物語を考えただけだった。神が作ったにせよ、何の意図も由縁もなく、ただ世界が誕生したのだと受け止められるほど原始の人々はマテリアリストではなかった。だから例えば、原初の水から創造神が誕生し、混沌(こんとん)とした世界に秩序をもたらす。そしてその後、大気の神が天と地を引き離し、太陽神が空を治めるようになった、…
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