英国のスターマー首相は29日、9月の国連総会の前に条件付きでパレスチナを国家として承認すると発表した。パレスチナ自治区ガザ地区での停戦合意がない場合などの条件を設け、イスラエルに停戦交渉を進展させるよう迫った。主要7カ国(G7)で国家承認を表明したのは、フランスに続き2カ国目となる。
29日に緊急の閣議を招集した後、発表した。英国はこれまで、パレスチナ国家の承認に反対する米国への配慮などから、早期の承認に消極的だった。だが、ガザで飢餓などの人道危機が深刻化する中、方針を転換した。
スターマー氏は演説し、あくまでイスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」を目指す従来の方針に変更はないと強調。一方で、ガザの状況が「耐え難い」ものとなり、2国家解決の可能性が「しぼみつつある」と懸念されるため、国家承認の表明に踏み切ったと説明した。
このタイミングでの決断の背景には、国内外での圧力の高まりと、トランプ米大統領の「暗黙の承認」(英紙ガーディアン)があるとみられる。
24日にはマクロン仏大統領も国連総会にあわせてパレスチナ国家を承認すると表明。他国にも同調を働きかけていた。また、英メディアによると、スターマー氏が党首を務める労働党などの下院議員250人以上も国家承認を求める書簡に署名している。
さらに、トランプ氏は28日にスコットランドでスターマー氏と会談する直前、国家承認に関する記者の質問に「彼(スターマー氏)がそうするなら、私は構わない」と答えていた。
ただ、ロイター通信によると、トランプ氏は29日、スターマー氏との会談では国家承認について「一切話していない」と記者団に述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は29日、X(ツイッター)に「スターマーは(イスラム組織)ハマスの残忍なテロリズムを報奨し、その被害者たちを懲らしめている」と投稿し、パレスチナ国家承認の方針に反発した。
スターマー氏は演説で、イスラエルとの戦闘を続けるハマスに対しても、人質の即時解放▽停戦への合意▽武装解除▽将来のガザの統治に関与しないこと――を求めた。【ロンドン福永方人】
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