一般財団法人「国際セラピードッグ協会」(東京都中央区)は22日、東京都港区の在日ウクライナ大使館で、ロシアによる侵攻が続くウクライナから日本に避難した子供たちに、犬を題材に命の大切さを伝える絵本「チロリ」のウクライナ語版を贈呈した。ハンガリーのNPO関係者を通じて、戦禍で暮らすウクライナの子供たちにも届ける。協会は計5万部の配布を目標としている。
絵本はA4判の冊子で、殺処分寸前で助けられた捨て犬チロリが「日本初のセラピードッグ」として高齢者や入院患者らに元気を与えた一生が実話に基づいて描かれている。ウクライナ語版の末尾には「戦禍のウクライナの子供たちをはじめ、すべての人が幸せになることを心から願っています」と記された。
この日は絵本贈呈のほか、日本に避難してきた人たちが実際にセラピードッグと触れ合った。ロシアの全面侵攻開始から間もない2022年4月に祖母や母と日本に避難したマルガリータさん(6)は、少し怖がりながらも大型犬の頭や首をなでて、「(毛が)やわらかくて気持ちいい。かわいい」と笑顔を見せた。ウクライナの家では2頭の犬を飼っているといい、母アリーナさんは「今日は寝る時にチロリを読み聞かせたい」と話した。
絵本の著者で、国際セラピードッグ協会代表を務める音楽家の大木トオルさんは「(現地の知人から届いた)映像を見て、防空壕(ごう)に母親と隠れている子供の姿に大変心を痛めた。絵本を通じ、勇気を持てるのではないか」と力を込めた。同席した在日ウクライナ大使館のオレクサンドル・セメニューク臨時代理大使は「ウクライナの人々はサポートが必要な状況にある。(チロリの)サポートの物語は非常に大事だ」と謝意を述べた。【浅川大樹】
Comments