3児死亡の飲酒事故で生き残った母 初講演で明かした決意の告白

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スクリーンに映し出された亡き子どもたちの前で命の大切さを伝える大上かおりさん=福岡市東区の博多高で2025年7月11日、矢頭智剛撮影
スクリーンに映し出された亡き子どもたちの前で命の大切さを伝える大上かおりさん=福岡市東区の博多高で2025年7月11日、矢頭智剛撮影

 飲酒運転は取り返しのつかない悲劇をもたらす。これを知らしめた事故がある。福岡市で幼いきょうだい3人の命が奪われたあの事故だ。

 それから19年。3児の母親である大上(おおがみ)かおりさん(48)は7月11日、私立博多高校(福岡市)にいた。体育館の壇上に立ち、背後には亡き3人が映し出された。事故について講演するのは初めてだ。集まった生徒ら約1200人に語りかけた。「私の高校生からの夢と、それがかなった日、失った日、この三つを話します」

 <後編はこちら>
 母が自問続けた「生かされた意味」 飲酒事故で失った長男との約束

「たくさん産んでいいですか」

 大上さんはいつか母親になるのが夢だった。大家族に憧れ、夫の哲央(あきお)さん(52)のプロポーズに対する返事は「子どもをたくさん産んでいいですか」だった。

 結婚し、長男の紘彬(ひろあき)ちゃんを妊娠すると、おなかをなでては「どんな子かな」と想像した。性別が分かると、服を選びに何度も店に足を運んだ。

 講演では「待ちに待った陣痛が来た日も忘れません」と語った。2001年9月13日、失神するほどの痛みに耐えながら、深い幸福感に満たされたのを覚えている。「お母さんになるということは、命と命をつなぐことなんだ。赤ちゃんって、すごいなあ」

 2年後の03年に次男・倫彬(ともあき)ちゃん、05年に長女・紗彬(さあや)ちゃんを出産。「子育てが大変というより、宝物が増えていく。幸せしかなかった」

深い幸福感、口癖は「時が止まればいい」

 夜はベッドを横につなげ、親子5人で寝そべった。紗彬ちゃんの両脇に2人のお兄ちゃんがくっついて、3人で手をつないで眠る。その姿が目に焼き付いている。

 「人は亡くなったらどこに行っちゃうの?」。きょうだいが増えるにつれ、紘彬ちゃんは「命」に興味を持つようになった。「天国だよ。3人に何かあったらお母さんは生きていけんけん、まだだめだよ」。そう伝え、抱きしめた。出産した病院の前を通ると、紘彬ちゃんは「赤ちゃんってどうやって生まれてくるの? 次に生まれてくる時は僕も一緒に見ていい?」と真剣なまなざしで問いかけてきた。大上さんは約束した。「いいよ。一緒に行こう」

 少しずつ大人びていく紘彬ちゃん。七夕の願い事に「おかあちゃんといっぱい、いっしょにいたい」と書くほど甘えん坊の倫彬ちゃん。まだ「ママ」と言えず、よちよち歩きの紗彬ちゃん。「時が止まればいい」。それが夫婦の口癖だった。

絶望の光景が広がった「あの日」

 「次に、失った日の話をします」。講演で「あの日」…

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