消防隊員2人が死亡した大阪・ミナミの雑居ビル火災は25日で発生から1週間を迎えた。現場近くでは、この日も手を合わせに来る人が絶えず、献花台は花束であふれた。
献花台を訪れた大阪市消防局に勤務する40代の男性隊員は「最後は煙で何も見えない状況で怖かったと思う。消防隊員はあのような状況下では、助けを待っている人がいると思って活動する。本当に悔しい」と2人の死を悼んだ。
現場に向かって手を合わせていた大阪市天王寺区の野崎壱成さん(19)は、消防士を目指して市内の専門学校に通っているという。「現場を見た瞬間に心が痛くなった。とても悲しいが、2人の思いを背負って消防士を目指したい」と誓った。
名古屋市から旅行で大阪を訪れていた大島直己さん(21)は「実際に現場に来ると、悲惨さに言葉が出ない。勇気のある同世代の消防士が亡くなり、胸にくるものがある」と語った。
火災は18日午前10時前に発生した。道頓堀近くの7階建てと6階建ての雑居ビルが焼け、いずれも浪速消防署に勤務する消防司令の森貴志さん(55)と、消防士の長友光成さん(22)が亡くなった。
2人は火元とは別の7階建てビルで活動中に天井の崩落が起き、建物内に取り残されたとみられている。
市消防局は6階建てビルの1階付近から出火した炎が屋外広告を伝って隣のビルに燃え広がったと推定している。府警は1階付近にあった室外機周辺が火元の可能性があるとみて、出火原因の特定を急いでいる。
大阪市の横山英幸市長は25日、道頓堀周辺に設置されている屋外広告の申請状況などについて調査する方針を示した。
消防隊員の死亡事故を受けて、市消防局は21日に局内に調査委員会を設置。事故の原因究明や再発防止策を検討している。【松原隼斗、大坪菜々美】
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