目指そう、飲酒運転ゼロを――。福岡市東区の「海の中道大橋」で幼いきょうだい3人が犠牲になった飲酒運転事故から19年となった25日、福岡県などが主催する飲酒運転撲滅の県民大会が北九州市で開かれた。飲酒運転による死亡事故が昨年、8年ぶりに増加したことに危機感を強めた3児の母親の大上かおりさん(48)が初めて出席。「この撲滅大会がいつか解散できる日が来ることを願って活動していきたい」と訴えた。
事故は2006年8月25日夜に発生。大上さん一家5人が乗る乗用車が当時22歳で福岡市職員だった男性(41)=懲戒免職=の車に高速度で追突され、橋から海に転落。長男の紘彬(ひろあき)ちゃん(当時4歳)、次男の倫彬(ともあき)ちゃん(同3歳)、長女の紗彬(さあや)ちゃん(同1歳)のきょうだい3人が水死した。
県民大会は事故から10年となった16年に始まり、毎年この時期に開催。大上さんは事故後に授かった4人の子どもたちと共に出席し、集まった約300人と共に黙とうをささげた。
その後、大上さんら飲酒運転事故の遺族が登壇。大上さんは「今日は子どもが亡くなってから19年の日。この日を撲滅大会の日にしてくれた思いを大切にしながら、活動に取り組みたい」と話した。福岡県粕屋町で11年2月に起きた飲酒運転事故で高校1年生だった長男を亡くした山本美也子さん(57)も「飲酒運転をなくしていきたい、亡くなる命を一つでも減らしていきたい」と力を込めた。
海の中道事故をきっかけに飲酒運転撲滅の機運は高まり、07年には道路交通法が改正され、飲酒運転の最高刑が引き上げられるなど厳罰化が進んだ。06年に612件だった全国の飲酒運転死亡事故は23年に112件まで減少していたが、24年は140件となり、8年ぶりに増加に転じた。
県民大会後、報道陣の取材に応じた大上さんは「19年たっても子どもに対する愛、さみしさ、喪失感、事故の苦しみ悲しみは変わらない。私が届けるメッセージで飲酒運転をやめようと思う人が一人でも多く生まれてくれることを望んでいます」と話した。
この日、事故現場の橋には朝から市民らが訪れ、海に向かって手を合わせたり、花を手向けたりしていた。福岡市東区役所の女性職員(26)は「忘れてはならない事故だと自分に言い聞かせるために来た。風化させないよう発信しなければならない」と語った。
福岡市役所でも飲酒運転撲滅イベントが開かれ、高島宗一郎市長が「飲酒運転をなくそう」と訴えた。【金将来、川畑岳志、池田真由香】
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