タレントのタモリさんが、日本の世相を「新しい戦前」と評したのは2022年末のこと。それから2年後の今、戦前ムードたっぷりの法律を作ろうという動きが永田町で広がっている。その名もスパイ防止法。戦前の歴史に学びつつ、未来の日本を考えた。
B級映画マニアの間で「怪作」と呼ばれる作品がある。
「暗号名 黒猫を追え!」(1987年)。映画の版元は「スパイ防止法制定促進国民会議」なる団体だ。主人公は公安刑事。彼とその3人の友人を軸にした物語だが、驚くことに友人全員が他国のスパイなのだ。しかも、である。友人の恋人も友人の妹の夫もみなスパイ。ひたすらスパイ行為を罰する法を求めたプロパガンダ映画だ。
国民会議は79年、旧統一教会系の政治団体「国際勝共連合」を母体に誕生した。映画ではソ連を敵視したが、ホームページを見ると、現在は中国の脅威が強調され、「日本はスパイ天国」といった言葉も躍る。
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