世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に過去の献金や物品購入代金の返金を求めて集団調停を申し立てている50~80代の元信者10人が、教団本部が建つ土地(東京都渋谷区)の仮差し押さえを申し立て、東京地裁が認める決定を出した。18日付。元信者側は30日に記者会見し「解散命令の確定を前に、懸念されていた財産隠しを防ぐ意義がある」と評価した。
仮差し押さえは、賠償金などの不払いを防ぐため、紛争が解決するまでの間、財産を事実上処分・移転できなくする手続き。教団は本部での活動はこれまで通りできる。対象の教団本部は高級住宅街として知られる渋谷・松濤地区にある。土地の推定評価額は8億円を超えるとされる。
教団を巡っては、東京地裁が3月、文部科学省の解散命令請求に基づき解散を命じる決定を出した。教団側は東京高裁に即時抗告しているが、高裁が地裁決定を支持すれば、最高裁の判断を待たずに解散命令の効力が生じ、教団の財産を清算する手続きが始まる。元信者側は高裁決定を前に、教団の財産が流出する恐れが高まっているとして6月10日付で仮差し押さえを申し立てた。
弁護団は、2023年12月に成立した宗教法人による違法献金などの被害救済に向けた特例法を初めて活用した。仮差し押さえの申し立てには、保全対象の財産の金額などに応じて担保が必要となるが、日本司法支援センター(法テラス)から全額の拠出を受けた。
教団は今後、元信者側が被害額として返還を求めている計約2億2600万円を法務局に供託すれば、仮差し押さえを解くことができる。教団は「当該土地の処分を行う予定は一切なく、全く必要性のない無駄な手続きが行われたと言わざるを得ない」とコメントした。【安達恒太郎】
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