
7月の参院選で落選し、政界を引退した武見敬三前厚生労働相(73)へのロングインタビュー後編。選挙戦で「品格のある民主主義」を訴えた武見氏が考える今後の日本に必要な政治とは。【聞き手・大場弘行】<※参院選ドキュメント「この国の岐路」を9月3日まで期間限定で公開しています>
――自民党から保守層が離れた理由をどう見ているのか。
◆安全保障上の脅威に対応しきれていないことがある。例えば6月、東京都の沖ノ鳥島と南鳥島沖の排他的経済水域に中国が2隻の空母を浮かべて発着訓練をした。選挙戦を通じて、特に若い世代の中に、こうした脅威を敏感に感じとり、「何で放っておくのか」と思っている層が確実にあると思った。
こうした国民の危機感と、「中国人が日本のマンションを買い占めているじゃないか」といった反発や排外主義が一体化してしまった。自民党の対応では手ぬるいという印象が若者層を中心に浸透したことが、自民離れの一因になったと思う。
――参院選を総括すると。
◆社会の中に自民党中心の政治体制に対する反発、否定する構図が出てきた。それが一つの時代のうねりになり、SNS(交流サイト)による相乗効果もあって投票行動となって表れた。
今の政治体制ではダメだという大きな烙印(らくいん)を世論は押したのです。一方で、野党が成長して政権交代の受け皿になったわけでもなかった。むしろ、ストレスを吸収してくれるわかりやすいメッセージを乱発した政党が得票を増やした。それは次のステージの社会をどう設計していくかという流れとは無縁だった。政治はこれから非常に混迷した局面に入っていく。
――再び自公で過半数を維持する時代はやってくるのか。
◆元に戻ることはほぼあり得ないでしょう。従来のような、衆参両院で多数を持つ政党が安定した政治的基盤に基づいて改革を実施する姿は、残念ながら今回の参院選で消えうせた。その意味でも歴史的だ。
一方で都市部の超高齢化、地方の過疎化の問題が深刻化していく。下手をすると、危機への準備ができないまま日本が埋没してしまう。
最悪のシナリオを避けるには、…
Comments