またも国会議員の公設秘書給与詐取を巡る疑惑が浮上した。東京地検特捜部が27日、日本維新の会の石井章参院議員(68)=比例=の関係先の家宅捜索に乗り出した。秘書給与詐取は再発防止の徹底が繰り返し叫ばれてきたが、議員側の「良識」に委ねられている状況は変わらず、抜本的な対策が求められている。
「こんなに物の値段が上がったら、1日ビール1本のところ、3日に1本になってしまう。生活を良くするためには目の前の税金を有効に使っていくことだ」
石井氏は7月の参院選で茨城選挙区の維新公認候補者の出陣式で応援演説に立ち聴衆に語り掛けた。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件も引き合いに、維新の党是である「身を切る改革」の重要性を訴えた。しかし、その1カ月後、「政治とカネ」を巡って、自らが特捜部の捜査の対象となった。
地元市議の一人は「実力者で頼りになる存在だが、資金繰りに苦労していたのだろうか」と漏らした。埼玉県の維新関係者は「国会の事務所にあいさつに出向いてもいつも閉まっていた。秘書がいないのかなと思った」と語った。
国会議員の間ではこれまで、与野党を問わず公設秘書の「名義貸し」がたびたび横行。2000年には民主党衆院議員だった山本譲司氏、03年には社民党衆院議員だった辻元清美氏らが相次いで立件された。
不正の温床を根絶しようと、議員の配偶者の秘書採用の禁止▽原則65歳定年制の導入▽兼職の禁止▽秘書に対する給与の直接支給――といった対策を盛り込んだ改正国会議員秘書給与法が04年に成立した。
しかし、肝心の「勤務実態のある秘書に適切に給与が支払われているか」については、国会の事務局といった外部がチェックするような対策は実現せず、事務所任せとなった。しばらく疑惑は浮上しなかったものの、特捜部は24年8月に自民党の参院議員だった広瀬めぐみ氏=有罪確定=を在宅起訴しており、秘書給与の問題に2年連続で切り込んだ。
公設秘書の氏名や採用日、勤務地などの情報を書き込んだ「現況届」は国会内でしか閲覧することができず、国民のチェックが広く及ぶ状況にはほど遠い。提出を怠ったことに対する罰則もなく、届け出の「形骸化」の問題も指摘されている。【鈴木美穂、斉藤瞳、五十嵐隆浩、佐藤緑平】
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