戦争は嫌だし、協力したくないと思っていても、「もしも」の事態に直面したらどうなるか。いつの間にか同調の嵐に巻き込まれてしまうのではないか。戦時体制下における表現者たちの姿を通して改めて考えさせられる舞台が、戦後80年の夏を刻んだ。
LiveUpCapsules「穿(うが)つ泡」(6~11日、東京・小劇場楽園、村田裕子作・演出)は、人気漫画「のらくろ」を生んだ田河水泡をモデルに、時代と人間、メディアをテンポよく描く秀作だ。水泡の軍隊経験から生まれたという野良犬黒吉が犬の軍隊で活躍する漫画は、日本が暗い戦争へ向かう時代に大日本雄弁会講談社(現講談社)発行の「少年倶楽部」で連載開始。多くの子どもたちに愛され、後の漫画家にも影響を与えた。
芸術を愛し、「戦争なんて大嫌い」という水泡(内田健介)と妻富士子(中村真知子)、編集者らとの関係を絡めながら、日本の大陸進出など世相を映し出す「のらくろ」、軍の統制下に置かれていくメディアの姿を、キレのいい会話で浮かび上がらせる。
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