
「オレは地元の公立中に行く」
中学受験を戦い抜いた2月初旬、家族で合格祝いの焼き肉を囲んでいたときだ。あらかた食事を終えたタイミングで、突然息子が宣言した。
「受験が終わったらオレに選ばせてくれるって言ったよね?」
たたみ掛けるように問いただす息子に、父は言葉を失った。
確かにそう言った。しかし妻が必死で伴走し、本人も勉強を頑張った。せっかく私立中に合格したのに、なぜ――。
何度確認しても息子の意志は固く、受け入れるしかなかった。
あれから5年半。その決断は吉と出たか、凶と出たか。親子のその後を取材した。
<主な内容>
・入塾は息子の意思ではなかった
・サッカーに夢中…成績振るわず焦りも
・6年生の秋に一変 勉強に本腰?
・後から分かった息子の「葛藤」
・父の後悔…5年半を経て息子は今
「令和のリアル 中学受験」第27部は9月下旬に公開予定です。
入塾へ誘導したのは父?
「そもそも、入塾は息子本人の意思ではなかったんです」
東京都在住の教員、田村俊夫さん(58)=仮名=は英太さん(18)=同=の中学受験スタートを振り返る。
4歳上の長女には「女子校に行きたい」という希望があり、親として夢の実現を支えるという大義名分があった。
一方、長男は私立中学に関心を向けなかった。
実は英太さんは3年生の秋に大手受験塾の入塾試験に落ちている。「これはまずい」。田村さんはリベンジを目指して再試験に向けた試験傾向の問い合わせに出向いた。
塾側は親に熱意ありと受け取ったのかもしれない。再試験の数日後に入塾を許可する電話がかかってきた。「頑張りましたね」とねぎらいの言葉に、ほっと胸をなで下ろした。
長男にも、塾に通わせチャンスを広げてあげるべきだ、と信じて疑わなかった。入塾を決定づけたのは、自分かもしれない。
「こんなことを言うとずるいのは分かっているのですが、妻も中受を希望していました」
親に導かれるまま、入塾を受け入れた英太さんに田村さんは約束した。
「最後、進む学校は自分で決めていい」
友人に恵まれ、サッカーに熱中
中学受験は小学3年の3学期に塾通いを始めるパターンが一般的だ。
英太さんの場合は、…
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