
4月のある週末、東京都内のホームセンターの一角で私は困惑していた。
「ちょっと20万円は……」
「でも皆さん、賛同して寄付いただいています」
初めて参加した保護犬の譲渡会でのこと。主催団体の男性スタッフから提示された金額に驚いた。
男性によると、団体の施設運営費や人件費は寄付で賄われている。こうした保護団体から譲渡を受ける場合、譲渡までにかかった飼育費や医療費を負担するとは聞いていたが、この団体は「寄付」とした上、かなりの額を求めてきたことに違和感を持った。
さらに、他の団体によくあるお試し期間「トライアル」はなく、このまま連れて帰ることも条件だった。バスを乗り継いで来ていたし、自宅にはまだケージもドッグフードもない。
周りでは次々引き取り手が決まっていく。「少し待つので寄付金について考え直してほしい。こういう子たちを減らしたいんです」。男性がなおもたたみかけてくる言葉が空虚に聞こえ、私は逃げるように会場を後にした。
同じ経験をした漫画家
もやもやした気持ちを消化しきれないまま過ごしていた時、X(ツイッター)上で同じような経験をした人を見つけた。漫画家で、遊郭を舞台に人間模様を描いた「あおのたつき」(マンガボックス)を連載中の安達智さんだ。
その時の出来事を漫画にした投稿には、約4万の「いいね」がついた。
安達さんが譲渡会を訪れたのは…
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