「これが現役最後の日だ」と思い涙 大阪ガスで引退した田中誠也さん

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社業への思いを口にする大阪ガスの田中誠也さん=大阪市中央区の大阪ガス本社で2025年5月16日午後3時59分、石川裕士撮影
社業への思いを口にする大阪ガスの田中誠也さん=大阪市中央区の大阪ガス本社で2025年5月16日午後3時59分、石川裕士撮影

 大阪を代表するオフィス街・淀屋橋。行き交うビジネスパーソンの中に、かつて球場を沸かせたサウスポーがいる。

 社会人野球の大阪ガスで投手としてプレーした田中誠也さん(27)。大阪桐蔭高、立教大、大阪ガスそれぞれで日本一を経験し、2024年シーズン限りでユニホームを脱いだ。

 引退に至る思い、現在とこれからのことを聞きたくて、大阪ガスの本社を訪ねた。

誕生日の電話で「来たか」

 「取材していただくのもこれが最後だと思ってきました。今日はよろしくお願いします」

 選手時代と変わらない柔和な田中さん。パリッとしたスーツ姿で、両手で丁寧に名刺を差し出した。昨年12月に人事異動があり、現在の仕事は、地域のガス事業者へのガス卸営業や関係会社の営業サポートだという。

 「新入社員に戻ったつもりで、フレッシュな気持ちで仕事に取り組んでいます」とにこやかに話した。

 選手時代は、身長173センチの体を大きく使ったダイナミックなフォームから、切れのある直球とチェンジアップを投げ込む左腕だった。

 大阪桐蔭高では、2年生だった14年夏の甲子園で優勝。背番号「10」ながら2試合に先発し、八頭(鳥取)との3回戦で完封するなど活躍した。エースナンバーを背負った3年春の選抜大会は4強入りした。

 立教大ではエースとして2年春のリーグ戦で優勝し、全日本大学選手権も59年ぶりに制した。リーグ戦の通算17勝は、15勝を挙げた明治大の森下暢仁(現広島)らを抑え、東京六大学の同学年の投手で最多だ。

 だが、大阪ガスでは思うような投球ができなかった。大学までは有効だった直球とチェンジアップの緩急が「通用しなかった」。社会人の打者はチェンジアップに体勢を崩されず、ボール球もなかなか振ってくれない。

 いつしか自分の投球に自信が持てなくなり、不安を感じながら投げていた。技術と気持ちの歯車がかみ合わなかった。

 「それまでは気にしなかった余計なことまで考えてしまって。『今のピッチング、周りはどう思っているんだろう』とか。もっとどっしりと、『自分は自分』でやればよかった。今はそう思います」

 期待に応えられず、もどかしい日々が続いた。大学までは意識を外に向けて成長の糧にしていたが、社会人ではどこか勝手が違っていたようだった。

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